隣の病い(中井久夫)

隣の病い (ちくま学芸文庫)

隣の病い (ちくま学芸文庫)

きっかけがあってこの人の文章に惹かれて、昨年あたりから少しずつ読む。今の自分の気分に、こういう言葉があうのだろうと思う。

昨年の三月ごろであったか、私はふっと定年までの年数を数え、もうお付き合い的なことはいいではないかという気になった。「面白くない論文はもう読まない。疲れる遠出はしない。学会もなるべく失礼する。私を頼ってくれる患者と若い人への義務を果たすだけにしよう。残された時間を考えれば、今の三時間は、若いときの三時間ではない」と思って非常に楽になった。
幸い、私はさほど大きな欲望を授からなかった。「自己実現」ということが人生の目標のようにいわれるが、私はほとんどそれを考えたことがない。私の「自己」はそれなりにいつも実現していたと、私は思ってきた。
(『私の死生観』P.254)

ギリシャ詩関連のところは読めなかったので、今はおいておくことにする。