公立学校の底力 (ちくま新書)(志水宏吉)』
「力のある学校」論で知られる著者が紹介する、12の力のある公立学校。それぞれの「力」のあり方に微妙にちがいがあり、ある学校の「力」とある学校の「力」は、ひとつところに並び立たないこともあるだろう、と思えるところもある。おそらく、それぞれの「力のある学校」に、固有名詞のひとがいて、固有の歴史がある、ということだと考える。これらの「力のある学校」のあり方に学びながら、それぞれの現場が、それぞれの「力」をはぐくんでいくことが大切なのだ。とてもおもしろく読む。
杉並区立「和田中」の学校改革―検証地方分権化時代の教育改革 (岩波ブックレット NO. 738)苅谷剛彦)』
「和田中」の学校改革の「決算書」(p.89)。筆者たちは和田中に立ち入って、「二つの顔(改革というハレの顔、日常というケの顔)」を読み取り、その交錯のあり方、生徒たちへの影響を見る。そのなかで、

  • ハレとケとは、なかなか交錯しなかった。
  • ハレの部分は、いわゆる不利層を支えた。

という点が興味深い。あと、藤原氏が学校、教員の状況を的確に把握して、必要なところを残し、不要なところを削り、教員を「教科指導」「生活指導(部活含む)」に特化できるようにし、そのうえで結果を求めた、というあたりが、メディアの華々しい報道からはうかがい知れない、いい話であるように思える。今年、「和田中の学校改革」をまねすべく、文部科学省が50億の予算を投じたわけなのだが、他の学校がまねしようとするとき、藤原氏の資質に依拠した部分(マネジメント、社会関係資本)のことを念頭に置くべきなのだと考えた。